コピーとダビング

テレビ番組を録画保存するとき、僕たちは〈コピー〉と〈ムーブ〉という問題に出会います。
僕は、今〈コピー〉と言いましたが〈ダビング〉とも言いますよね。
テレビ番組には〈ダビング10〉とか〈コピーワンス〉と言うのがあります。〈ダビング10回〉〈コピー1回〉ということです。僕はついつい〈コピー10〉と言っていました。 ダビング10のイメージ

東芝のブルーレイレコーダー ダビング10の動画はこのように表記されています。

しかし、ここでは〈ダビング10〉とか〈コピーワンス〉と違う言い方をしているダビングとコピーは、何か違いがあるのでしょうか。
日本語にすると〈ダビング〉や〈コピー〉はアバウト〈複写〉〈複製〉〈転写〉〈録画〉といった言葉なのですが、僕らはやはり少し違うイメージで使っているように思います。

〈コピー〉は、端的に〈複写〉〈複製〉〈オリジナルの複数化〉を指しています。
〈ダビング〉は〈コピー〉も含む〈データ変換〉作業全般を指しているように思えます。
〈コピー〉は、具体的にはデータコピーやディスクコピーのことを指していたり、あるいは〈複写〉〈複製〉〈オリジナルの複数化〉そのものを指しています。 〈コピーワンス〉には「オリジナルのコピーは一回だけで複数化は認めない」という意志が表現されている様にさえ思えます。一方〈ダビング10〉はもう少しゆるく〈オリジナルの複数化〉を認めて、テレビ番組を楽しむ人たちの利便性にポイントを置いたシステムだから〈ダビング〉という名称なのではないのでしょうか。

そもそもテレビ番組の動画そのものは〈コピーワンス〉=〈コピー禁止〉なのだと思います。だから、いったんハードディスクからダビングされ切り離された番組動画は〈コピーワンス〉の動画としてふるまいます。もはや複数化は禁止された動画の本来の姿になるのです。 コピーワンスイメージ1

東芝のブルーレイレコーダー ダビングされたディスクの番組動画にはコピー回数の表記はありません。

コピーとムーブ

さて、それでは〈ムーブ〉とはなんでしょうか?日本語で言えば〈移動〉のことですよね。
〈コピーワンス〉の複数化が禁止された番組動画をハードディスクからブルーレイディスクやDVDディスク、あるいは他のハードディスクに移す事を禁止してしまうのは実際のニーズに合いません。最初に録画したハードディスクでしか見れないという事になります。本来〈コピー〉と〈ムーブ〉は全く異なる行為なのですが、テレビ番組ダビングにおいては〈ムーブ〉とは〈コピー〉の特殊な形式のように見えます。
データを違ったメディアに移すには実際には〈コピー〉するしかありません。コピー元のハードディスクからコピー先のブルーレイディスクにコピーしてコピー元オリジナルを削除するする。記録メディアの変更をしたい、ディスクに保存したいとのニーズに応えてもオリジナルの複製化は認めない。〈引越し〉による記録メディアの変更が〈ムーブ〉という事になります。

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パナソニックのブルーレイレコーダー コピーワンスの動画をディスクに書き出すときの表記。

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パナソニックのブルーレイレコーダー ディスクに書き出した動画をディスクにムーブバックするときの表記。

テレビ番組は〈コピーワンス〉や〈ダビング10〉の番組動画も基本的には〈コピー禁止〉なのだと思います。例外は唯一ハードディスクに録画された〈ダビング10〉の番組=動画が9回の複製が認められているのだけではないでしょうか。
テレビ番組がデジタル放送となり、視聴者がその番組を繰り返し見るために番組を保存する方法をどうするかというところで生まれたコピー方法が〈ムーブ〉の様です。
〈ムーブ〉というのはあくまでもテレビ番組のダビング、コピープロテクトの中でのコピー方法のことです。

コピープロテクト

テレビ番組のコピープロテクトの支配下では、番組の動画は〈ムーブ〉でコピーしなければ視聴出来ません。
テレビ番組のコピープロテクトは、このルール、仕組みを受け入れ守る機器や状況の支配下でしか〈視聴出来るコピー〉はできないのです。
テレビ番組の動画を無理矢理コピーしようと思えば、とりあえずコピーは出来ます。しかし、その番組の動画を再生視聴しようと思っても強引にコピーした番組動画は見れません。
テレビ番組のプロテクトがかかっている番組動画は常にオリジナルであるという証明書を持った1つの動画しか再生視聴できません。1つの証明書=許可証が発行されていて、その許可証を持っているもののみが再生視聴できるのです。つまり〈視聴できる動画〉を複製による増産が出来ない仕組みになっています。1つが増産されれば1つは削除されたという事が〈管理情報〉として記録されています。そのことが確認できれば〈視聴の許可証〉が新たに生まれた動画に渡されるわけです。
〈ムーブ〉とは、オリジナル番組動画が〈コピー〉と〈削除〉(1+1-1=1)で移動して、同時に管理情報の書き換えがセットで行われます。〈ムーブ〉とは実質的には〈コピー〉で、見かけは〈引越し〉というわけです。
ですから、質の悪いコピー環境であると番組動画コピー時に動画のデータにエラーが書き込まれれば、たとえ許可証があったとしても、番組動画が見れないという事も起こりうるのです。また、逆に管理情報の部分にエラーが含まれると、その番組の動画はが問題ないデータであったとしても、見る事ができなくなるという残念なことも起こっているのではないでしょうか。今までテレビ番組のダビングシーンでは体験したことのない奇妙なトラブルもこのような新しいコピープロテクトの中で起こっているように思えます。
機器やディスクの改善によって現在のトラブルはもっと減ると思います。